賢人です。
今回は、投資などでよく聞くキーワードだけど、実はよくわからない。今更聞けない「含み益」と「含み損」、そしてその確定タイミングとそれを利用した節税方法についてわかりやすく解説します。
株や仮想通貨の話題とかで特によく聞きませんか?
「昨日の値動きで含み益50万出てるわぁ」
みたいな。あるいは、その逆。
「今回の下落で含み損が50万まできた……。損切りかなーこれ」
みたいな。
Contents
「含み」ってなんだ?
「含み益」と「含み損」に共通ものがありますよね?
「含み」です。
簡単にいうと、「益を含んでいる状態」「損を含んでいる状態」ということです。
つまりこれらは、ある時点での潜在的な利益額(あるいは損失額)のため、実際に売却するまでは金額が確定しません。
例えば、このケースを例に具体的に説明していきますね。
Aさんは仮想通貨に興味を持ち、ついに仮想通貨取引に参入しました。
100万円を使って、Bitcoinを購入することにしました。
パターン1
100万円で買ったBitcoinはなんと値上がりして130万円になりました。
これに気をよくしたAさんはまだ値段が上がると期待して、日本円に交換せずBitcoinをそのまま保持することにしました。
この時点での「含み益」は30万円ですね。
実際に日本円に交換すれば130万円になって、30万円の利益がでますが、Aさんは値段はまだ上がると予想して、交換していません。
だからこそ「30万円の利益が含まれている」状態ということです。
パターン2
100万円で買ったBitcoinはなんと値上がりして130万円になりました。
たった一晩での値の動きで30万円も上がったことを喜ぶAさんでしたが、逆に30万円落ちてしまう不安にかられて、すぐに日本円に交換して130万円を手にしました。
これは、「含み益」が30万円ある状態で、利益を確定させたということになります。よく、投資で「利確」という言葉を聞きませんでしょうか?
「利確」とは、「利益を確定させる」ということで、利益が含まれている状態のものを取引や売却などによって確定させることをいいます。
つまりAさんは、含み益30万円のBitcoinを売却することで利確し、30万円の利益を得たということになります。
パターン3
100万円で買ったBitcoinはなんと値下がりして70万円になってしまいました。
Aさんは、ショックで食欲もありません。しかし、Aさんはまだ諦めていませんでした。
これまでだってこれくらいの下降はあったので、きっと盛り返してくれると信じて日本円に交換せずにこのまま持っておくことにしました。この時点での「含み損」は30万円ですね。
実際に日本円に交換すれば70万円になって、30万円の損失がでますが、Aさんは値段はまだ上がると予想して、交換していません。
だからこそ「30万円の損失が含まれている」状態ということです。
パターン4
100万円で買ったBitcoinはなんと値下がりして70万円になってしまいました。
Aさんは、ショックで食欲もありません。
たった一晩で30万円分も下落したのは何かの前触れで、この先もっと下落してしまうかもしれない。そんな不安にかられたAさんはすぐにBitcoinを日本円に交換しました。
これは、「含み損」が30万円ある状態で、損失を確定させたということになります。よく、投資で「損切り」という言葉を聞きませんでしょうか?
「損切り」とは、ロスカットとも呼ばれ、損失が含まれている状態のものを取引や売却などによって確定させ、損害の拡大を防止することをいいます。
つまりAさんは、含み損30万円のBitcoinを売却することで損切りし、30万円の損失を出しながらも、これ以上の損失をださないようにしたということになります。
「含み益」「含み損」は、確定申告と密接な関係が
さて、賢明な読者の皆様であれば、年に1回のあるものと「含み益・含み損」は密接な関係があることに気づいたのではないでしょうか。
「年に1回…?あっ」
そう、確定申告です。
どう関係するのかというと、今回のAさんのパターン1の場合、12月31日の時点で利確せずに「含み益」の状態でいれば、その年の課税対象にはならないのです。
だって利益は確定させていないわけですからね。
もちろんこれは損失においても同様です。なので年末は、この「含み益」と「含み損」をどのように扱うかが非常に重要で、それによって税金の額が大きく変わってくることになるので、慎重な判断が求められます。
では、株をテーマに「含み益」と「含み損」、そして利益を確定させるタイミングについて詳細に紹介していきましょう。
利確・損切りのタイミング
とはいっても、「含み益」や「含み損」を確定させるタイミングは難しいですよね。人によって、状況によってベストなタイミングは異なるでしょう。
今回は、株と税金と確定申告に関連する「含み益」「含み損」の確定タイミングについて1つテクニックをご紹介します。
みなさんは株取引をする際の証券口座は、「特定口座・源泉徴収あり」が多いですよね?
「そりゃそうよ、確定申告めんどくさいもん」
という声が多いとは思いますが、一旦簡単に証券口座についての説明をしますね。
証券口座における「一般口座」と「特定口座」
まず前提として、株で利益を出した場合、税金がかかります。株取引で利益が出た場合の税金は通常、利益の20.315%(復興特別所得税が加算されているので少し数字が細くなっています)を税金として支払わなければなりません。
株式投資の証券口座には「一般口座」と「特定口座」の2種類があります。
「一般口座」は、その名の通り一般的な普通の口座です。
株式投資で出た利益や損失などの申告など全て自分で行わないといけません。自分で頑張って「年間取引報告書」なんてものを作らないといけないので、証券口座を作るにあたって、「一般口座」を作る理由はほとんどないと言っても過言ではないでしょう。
「特定口座」は、「一般口座」とは違い、金融機関が無料で株や投資信託の利益・損を計算してくれて、「年間取引報告書」まで作ってくれる口座です。これは、1証券会社につき1口座作ることができます。基本的に証券口座を開く場合はこちらを選択するのが一般的です。
「特定口座」は、さらに2つの種類があります。
特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が利益・損失を計算してくれて、書類も準備してくれる。 確定申告しなくてもいい。 |
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特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が利益・損失を計算してくれて、書類も準備してくれる。 確定申告しなければいけない。 |
ようするに、払わなければならない税金を証券会社のほうで自動的に徴収するかどうかを選べるということです。
では、みんなどの口座を選んでいるんでしょうか?
日本証券業協会の調査によると特定口座を開設した人のうち91.89%が「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいるようです。みんな確定申告したくないんですね。
サラリーマンの場合
この証券会社の特定口座の話をする時、必ず話題になるのがサラリーマンの年末調整の話です。
年末調整というのは、給与所得を主とする人(サラリーマンや公務員、アルバイトなど)に対して会社(事業者)が支払った1年間の源泉徴収した所得税について12月(年末)に再計算して所得税の過不足を調整することを指します。これのおかげで、確定申告をしたことのない人も多くいるはずです。
一般的にサラリーマンの場合は、毎月の給料から所得税が自動的に源泉徴収(天引き)されます。ただし、この金額はあくまでも仮の金額のため、最終的な正しい金額に直すための作業が年末調整というわけです。
通常は、毎月天引きされている仮の所得税額は少し高めに設定されています。なので、大半の場合、年末調整をすることで払いすぎた所得税が戻ってきます。さらに様々な控除も用意されていますね。最近では、「ふるさと納税」をしてる人も多いでしょうから、年末調整に関しては多くの人が知っていることでしょう・
まぁ要するに、税金を収めるための確定申告のように面倒臭いことをしなくていいような仕組みですね。
ただし、サラリーマンで年末調整を毎年行っている場合でも、給与所得以外の所得が20万円を超える場合は、別途確定申告が必要になります。投資での利益や副業での収入ですね。
厳密には、20万円以内の人でも確定申告することは可能です。めんどくさいのでしない人の方が多いでしょうが。笑
20万円以内だと源泉徴収あり口座は損をする?
サラリーマンで年末調整を毎年行っている場合でも、給与所得以外の所得が20万円を超える場合は、別途確定申告が必要になりますが、逆にいえば20万円以下の場合は申告する必要がありません。
これって言い換えると年間で20万円以内の利益であれば、税金がかからないというわけです。
ただし、「特定口座(源泉徴収あり)」は、この制度との相性があまり良くありません。
なぜなら、「特定口座(源泉徴収あり)」では、利益を出す毎に自動的に所得税が天引きされるため、年間の所得が20万円以内になって実質税金がかからない結果になってもすでに税金を払ってしまっているからです。
例えば、年間の利益が10万円だった場合
特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が利益・損失を計算してくれて、書類も準備してくれるが、20万円以下なので確定申告しなくてよい。が、自動的に源泉徴収されてしまうので、10万円×20.315%=20,315円を納税してしまい、利益は79,685円になってしまう。 |
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特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社が利益・損失を計算してくれて、書類も準備してくれるが、20万円以下なので確定申告しなくてよい。 →確定申告しないので税金がかからず10万円丸々利益になる |
なので、サラリーマンで株取引の年間取引額が20万円以内に収まるような少額の取引をメインにする場合は、源泉徴収なしを選ぶという選択肢もあるわけです。
「含み益」「含み損」の確定タイミングについて節税テクニック
さて、いよいよ「含み益」と「含み損」に関連する確定タイミングについての節税テクニックです。
まず、株式投資で利益を出すと、特定口座の中では通常20.315%が課税されることはすでに何度も説明した通りです。
今回の節税ポイントは
ある程度の利益確定している年に、ほかの株で「含み損」がある場合、損失を確定する(損出し)事によって、確定利益を下げ節税する。
どういうことか、Bさんを例に説明します。
Bさんは、とある株を4月に1,250円の頃に1000株125万円分購入しました。株はグラフのように値を動かし、一時は「含み益」を出している時もありましたが、Bさんは、既に他の株でかなりの利益を出していたため余裕があり、この株のポテンシャルを信じ、利益を確定させることなく保持することにしました。
そして12月、再び値が上昇の気配を見せるものの、購入時1,250円だった株は750円と、まだ50万円の「含み損」がある状態で年末がやってきました。年間を通して、他の株でBさんは100万円の利益を出していて余裕もあったため、この株のポテンシャルを信じてもうしばらく保持しようと考えています。
通常であれば、この場合、税金の対象となるのは利益の100万円となります。
しかし、今回紹介する方法で「含み損」の状態の50万円の損失を確定することで課税対象の利益をおさえることで節税が可能です。本来であれば約20万円を税金として支払わなければならないところを、これによって約10万円で済むことになります。
「上がるの期待してるのに損失確定させちゃったらダメじゃん」
と思うでしょうが、やり方があるんです。
とはいっても方法は単純で、同一銘柄を買い戻すというだけです。このとき注意しなければならないのは、同一営業日に買戻さないことです。
株式取引のルールでは、同一営業日の「売り」と「買い」は「買い」が先に計算されるため、買い付け平均単価が変化してしまいます。そうなると、750万円で売って損失を確定させたはずが、750万円で当日に買い戻してしまった場合、「買い」が先に計算されることで、買い付け平均価格が変化し、
[1,250円(平均単価)+750円(今回の注文分)]÷2=1,000円(新平均単価)
となり、確定させた損失額が25万円に減ってしまうという状況に陥ってしまいます。これを避ける為に同一営業日は避けなければなりません。また、自分の注文に自分に注文をぶつけるこの方法は、「仮装売買」と判断される場合もあります。これは、売買が活況になっているかのように見せかけることができるため、株式取引において禁止されています。個人レベルの小規模なものであれば問題視されることはあまりありませんが、かなりの資産家が大規模に行う際は注意しなければなりません。
さて、同一営業日に買戻さないということは、翌営業日までのあいだに値が動いてしまうことがありますよね?せっかく値上がりを期待しているので、なるべく売った額と同じ額で買い戻したいのでこれが難点となります。
手法として、複数の証券会社の口座を使って同一営業日内に買い戻すことも可能ですが、これは管理が面倒です。
そこで登場するのが信用口座です。信用口座とは、信用取引を行うための口座で、現金や株式を担保として証券会社に預け、証券会社からお金を借りて株式を買ったり、株券を借りてそれを売ったりする取引のことをいいます。
なぜ信用口座がここで登場するのかというと、信用口座は現物買いの口座とは買い付け単価の計算が別だからです。これならば、買い付け平均単価を変動させることなく、同一営業日にすぐに買い戻すことが可能です。そして翌営業日に、念のため信用口座から現物口座へ移せばすっかり元通りというわけです。
つまりBさんの場合
- 株を750万円で売って損失を確定
- 同営業日に信用口座にて(なるべく)同一価格で信用買い
- 翌営業日に信用口座から現物口座へ現引き
という方法をとることで、損失を確定(損出し)し、税金の還付を受けることができるというわけです。
※現引きとは、信用取引で取得した株式を自分の現金で引き取ることを言います。
このような、同一銘柄において同数量の「買い」と「売り」の注文を同時に発注し、約定させる取引のことをクロス取引と言います。クロス取引を使って株式優待をただで手に入れる…なんて方法もありますが、長くなりすぎてしまうので今回は割愛します。
ちなみに、年末はこういった損出しの為の売却が様々な銘柄で見られます。これが年末の株安の原因の1つにもなっています。
ちなみに、この損出し取引には、心理的なプラス効果もあります。
なんだかんだ「含み損」を抱えた状態のの口座画面を見続けるのは、なかなか心中穏やかじゃないですよね。笑
「あー損してるなぁ…ちゃんと上がるかなぁ…早く上がらないかなぁ…」
なんて日々考えてしまいがちです。しかし、損出しによって損を確定させることで、とりあえず一旦処理してしまえば節税になる上に、画面上は「含み損」の額は減りますからね。(本質的には資産的影響はないんですが、あくまで気分の問題です)
年末に一度いろいろと清算して、新年に気持ちを切り替えて清々しい気持ちで新年を迎えられるでしょう。
まとめ
「含み益」「含み損」の話から、その確定させるタイミング、確定タイミングを利用した節税について、証券口座の「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」や「信用口座」にまで話が及んできましたがいかがでしたでしょうか。
投資や資産運用をしていく上で、「含み益」「含み損」の確定タイミングや節税については、常につきまとう話です。
こんなことを書いていると
「やっぱり投資って難しい…」
と感じられる方がいるかもしれませんが、そんなことはありません。
投資や資産運用では、積立商品のように自動的に資産を増やすためのものなどもありますから、自分にあった投資や資産運用から初めて少しずつ金融知識をつけて資産を増やしていきましょう。
積立商品で言えば、私は海外投資が得意なので海外積立をおすすめします。日本の積立商品はどうしても利回りが低くなりがちなので、個人的にはあまりおすすめしません。
もちろん海外投資や海外積立以外にも今回の株をつかった投資や節税についても、相談や質問に乗ることは可能なので、ぜひ連絡ください。
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